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レンズの収差

レンズの収差

一点から出た光がレンズを透過して一点へと焦点を結ぶのが理想的なレンズですが現実にはさまざまな原因でズレたり歪んだりします。
ビデオカメラの受光部であるCCDは平面であるため光軸上の焦点は一点で結像しても光軸を横切って入ってくる光に対しては構造上無理が生じ、ズーミングによって絶えずフォーカッシングレンズやズームレンズが連動して焦点を合わしているので、全ての画角で画面の周辺部まで完璧に収差を取り去ることは不可能なのです。
このようなレンズの屈折によって焦点の位置が異なり、ズーミングによって結像する状態が異なることを収差と呼んでいます。

■レンズの色収差と単色収差の種類

収差は大きく分類すると色の波長の違いによって発生する色収差と、単色光によって発生する収差の二種類に分類できます。
色収差は色の波長によって屈折率が少しづつ異なるために生じ赤系の波長は長くて屈折率が弱く、青系の波長は短くて屈折率が強いことに起因します。
色収差には二種類の収差があり、色の波長によって結像位置が異なる軸上色収差と色の波長により結像倍率が異なる倍率色収差があります。
また単色光によって発生する収差には次の5種類があり、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲これをサイデルの5収差と呼んでいます。





軸上
色収差
軸上色収差【axial chromatic aberration】とは
光軸上において結像する位置が色の波長によって異なる現象のことをいいます。
この収差はズーミングとともに発生し望遠側で最も収差が大きくなります。
この収差は高倍率レンズになるほど発生しやすく、この収差の補正は屈折率と分散率の比率の異なるレンズを組み合わせて行いますが焦点距離が長くなるほど色収差の影響が大きくなるため望遠レンズでは色収差を補正することが非常に困難です。
軸上色収差を抑えるためにはなるべく望遠側を使わずに広角側での使用をオススメします。
軸上色収差
倍率
色収差
倍率色収差【chromatic aberration of magnification】とは
色の波長によって結像する像の大きさが異なる現象のことをいいます。
この収差は画面周辺部での色ズレ現象として影響しズーミングとともに変化します。
画面周辺部の色ずれは屈折率の高い青色光が放射線状の外側にズレやすくなります。
倍率色収差は画角に比例して発生するめ望遠側を使用することで改善することができます。
倍率色収差






球面収差 球面収差【spherical aberration】とは
光軸上の一点から出る光線がレンズの反対側で結像するとき、レンズ周辺部を通る光が中心部の結像位置よりも近い位置で結像してしまうために生じる現象のことをいいます。
画で再現すると右図のようにレンズに入射した光が点に結像せず少し丸く広がり円形に結像します。
レンズが球面であることから発生してしまうので球面収差と呼ばれアイリスを絞ることで大幅に改善できます。
ソフトフォーカスレンズはこの球面収差を利用したレンズです。
球面収差
コマ収差 コマ収差【comatic aberration】とは
光軸に対して斜めから入射される光のうちレンズの中心部を通る光と周辺部を通る光とが結像面上で一点に集まらないために生じる現象のことをいいます。
この収差があると画面周辺部の画が尾を引いた彗星のように扇形に広がってしまいコントラストが低下します。
コマ収差はアイリスを絞ることで多少は改善できます。
ちなみに"コマ"とはラテン語で"彗星"の意味。
コマ収差
非点収差 非点収差【astigmatism】とは
画面周辺部の画がフォーカッシング位置によって縦長や横長に見える現象のことで、同心円方向と放射線方向の焦点が一点に集まらないために生じる現象のことをいいます。
ピントを合わせた被写体の前後のボケが同心円状または放射線状の像の流れとなりボケ味の悪い画になります。
非点収差は画面中心に現れることはなくアイリスを絞ることで多少は改善することができます。
非点収差
像面湾曲 像面湾曲【curvature of field】とは
平面が平面として結像せずに湾曲状に結像してしまう現象のことをいいます。
平面の被写体にピントを合わせたとき画面中心部にピントを合わせると周辺がボケてしまい逆に周辺にピントを合わせると中心部がボケてしまうことになります。
像面湾曲はアイリスを絞ることで多少は改善することができます。
像面湾曲
歪曲 歪曲【distortion】とは
レンズに入射される光の傾きによって像倍率が変わるために発生する収差のことをいいます。
歪曲は正方形の画が糸巻き型や樽型に歪みズームレンズでは一般的に広角側で樽型、望遠側で糸巻き型の歪曲になる傾向があります。
一般的な手のひらサイズのDVカメラでは右図のように「糸巻き型」になる傾向があります。
歪曲はアイリスの絞り込みでは改善できず、被写体の入射角に大きく影響されます。
魚眼レンズはこの歪曲を究極に突き詰めたレンズです。
歪曲

■非球面レンズ

球面レンズと非球面レンズ 昔からカメラのレンズは凸レンズと凹レンズを組み合わせて収差を打ち消す方法が一般的です。
しかしこの方法だとレンズの使用枚数が多くなり、ましてや超望遠レンズになれば光の量を多く必要とするため前球を大きくしなければならず、前球が大きくなると収差もそれに応じて大きくなるため望遠レンズの設計は大変困難を極めました。

その収差を抑えるため蛍石などの結晶を使用し、電子プログラムによって研磨された屈折率の異なる複数のレンズを組み合わせることによって収差を打ち消し合っています。

最近ではガラス硝材を融解し金型で圧縮して一発成型する技術が向上したため、ガラスモールド非球面レンズやプラスチックモールド非球面レンズなどの非球面レンズによって収差を打ち消しレンズの小型、軽量化を実現し量産することが可能になっています。

非球面レンズとは一枚のレンズが球面や平面ではない曲面からできているレンズのことで、たとえば中心が曲面でレンズの周囲が平面など、それ一枚で収差を打ち消すように設計されたレンズのことです。

右図のように従来の球面レンズでは球面収差が発生するため光を一点に集めることが出来ませんが、非球面レンズではあらかじめ光を一点に集める設計がされているので収差なく光が集光するのです。
いままでにも非球面レンズの設計は考えられていましたが、レンズ屋さんからから言わせると成型レンズは邪道で軽視されがちだったのです。

しかも非球面レンズを作るには高温で溶かしたガラス硝材を一発圧縮成型する金型の設計が難しくコストもかかるので成型レンズには消極的でした。ところがレンズに関して無知な家電メーカーは量産が可能な成型レンズに着目したのです。

当時レンズ屋さんは一日数十本程度のレンズを研磨して生産していましたが、量産を考えた松下電器は1980年ごろから自社製レンズの設計に乗り出しました。

1982年にコダックが樹脂成型の非球面レンズを実用化したことを皮切りに松下電器もガラス成型の非球面レンズを完成し非球面レンズは徐々にビデオカメラ用レンズの主流になってきたのです。
現在のDVカメラが高性能なのに超小さいのも非球面レンズのお陰といってもよいのではないでしょうか。

ちなみに。。。CDなどで使用れさる樹脂成型レンズは耐熱性に弱く傷つきやすいのでカメラレンズとしては不向きだとと言われています。
やはりカメラにはガラス成型レンズが最適であり、当時の松下電器のガラスレンズへのこだわりが現在のライカレンズ導入へとつながっているのかも知れませんね。。。

...蛍石はガラスと分散率の異なる結晶で非常に高価なレンズに使用されている。蛍石の名の由来は紫外線を当てると蛍光を発することからその名前が付けられた。

ギロチン

■回折現象

上記で述べた収差はアイリスを絞ることで解消されるケースが多いため、通常の撮影時よりも一絞りアイリスを絞って撮影し、撮影後の編集でゲインを上げてやると良いのですが、アイリスを絞りすぎると別の不具合による解像度の低下が懸念されます。
俗に小絞りボケと呼ばれるコントラストの低下は光の回折現象が原因で発生しているのです。

回折現象とは直進してきた光の波がある物体の裏側に回り込む現象で、映像がボケてコントラストの低下を引き起こします。

この現象は光が鋭いエッジ部分を通過する時に最も起こりやすくビデオカメラではアイリスの羽によってこの現象を引き起こします。そのためアイリスを絞るほど回折によるコントラストの低下が発生し、この現象は収差とは異なる画像の劣化です。

光の回折現象は音が波の周期と大きさにより伝達されて隠れて見えない物陰まで到達することを考えれば、光も波の一種なので同様の現象が発生することが理解できると思います。
この現象の影響を抑えるにはNDフィルターを使ってアイリスの絞りをできるだけ開ければ影響を受けにくくすることができます。

最近の低価格ビデオカメラでは部品の簡素化とコストダウンのために写真のような「ギロチン式アイリス羽」に減光フィルムを付けた機構が主流です。
この方式は明るい太陽光の下で撮影した場合、アイリスを絞ると同時に減光フィルターがかかりCCDに入射される光を遮断する構造になっています。

一見、非常に合理的な方法なのですが、静止画撮影の時などに減光フィルターの「半がかり」などの影響もあるようです。。。(((^_^;
...NDフィルター(Neutral Density filter)はフィルターの中でも最も頻繁に使用するフィルターで色温度を変えることなく光の通過量のみを減衰させるため、被写界深度を変えたくない場合に使用する。



光と色の世界 レンズのf値とF値?
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