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進化する伝送方式

進化する伝送方式

昨今のデジタル伝送化が急速に成長を遂げている側面で、永きに渡り信号伝送の基礎を支えてきたアナログ伝送が終焉を迎えようとしています。
デジタル伝送の普及により、今まで考えられなかった長距離、高速、広帯域の光伝送が現実のものとなりました。中でもインターネットによる映像配信や放送の多チャンネル化、HD信号の伝送などが回線のブロードバンド化を牽引しているようです。

■アナログ信号の伝送

アナログ信号の伝送は大きく分けて2通りの伝送方法に分類されます。一つは一本の線で映像信号を伝送するコンポジット信号の伝送と、もう一つが輝度信号と色信号を別々の線で伝送するコンポーネント信号の伝送とがあります。
コンポジット信号はコンポーネント信号よりも画質は劣りますが1本のケーブルで4.2MHzのY信号に1.5MHzのI信号と0.5MHzのQ信号を多重して伝送するためコストも安く実用的で、現在もっとも多く使われている映像信号の伝送方法です。
しかしアナログコンポジット信号の伝送はケーブル長が長くなるほど減衰し位相関係もズレる欠点がありました。

一方コンポーネント信号は映像信号をY,Cb,CrまたはR,G,B信号に分けて伝送するため互いの信号干渉がなく品質の良い綺麗な映像再現が可能でした。しかし3つの信号のタイミングを一致させて送る複雑な回路構成とケーブル長の一致が必要で、しかも回路がコンポジットの3倍になる不経済な面を持っている為あまり普及しませんでした。

家庭用ではD端子がこれにあたり、輝度信号(Y)と色差信号(Cb)(Cr)を分けて伝送しています。
S-VHSも同じような考え方ですが、違いは輝度信号(Y)と色度信号(C)を区別しているだけで色信号は分けていません。

...D端子はディジタル映像機器とモニターを接続するための映像信号用コネクタのことで、D端子の"D"はデジタルの"D"ではなくD型コネクターの"D"であることに注意が必要。あくまでも伝送する信号はアナログ信号なのだ。 ...S-VHS(Super-Video Home System)は家庭用VHSフォーマットの輝度信号を4.2MHzから5.5MHzに上げて輝度信号と色度信号を別々に伝送することにより解像度を高めた方式。そのためVHSデッキでS-VHSのテープを再生すると映像が破綻し見ることができなくなる。そこで各メーカーは「SQPB」なる回路をVHSデッキに搭載して、とりあえずVHSデッキでもS−VHSの再生だけは可能にした経緯がある。
VHSとS-VHSテープの違いはテープ裏面にある小さな穴で認識するため、VHSテープの同じ箇所に穴を開けてS-VHSテープとして使ったらテープ代が安くなると誰しも考える?と思うが、そんな単純なものではない。(実験済み^_^;...)

■デジタル信号の伝送

D1-SDI信号は従来3本必要だったコンポーネント信号の伝送を、コンポーネントのデジタル信号である輝度信号Y(13.5MHz)、色信号Pb(6.75MHz)、Pr(6.75MHz)の信号を時系列に読み出すことにより、1本の同軸ケーブルでコンポーネント信号を扱うことを可能にしました。

デジタル信号の伝送は単純にコンポーネント信号を伝送できるだけではなく、伝送により減衰した信号をリクロックして元信号に復元することが可能となります。つまりデジタルでは「0」か「1」かの信号なので元信号が消えない限り理論上は復元することが可能なのです。(厳密に言えばジッターなどの問題で限界はありますが...)
...D1-SDI(D1 Format-Serial Digital Interface)とはCCIR(国際無線通信諮門委員会)勧告(現在のITU国際電気通信連合)に基づいた4:2:2シリアルデジタルコンポーネント信号のことで、輝度信号Y(13.5MHz)、色信号Pb(6.75MHz)、Pr(6.75MHz)合計27MHzの非圧縮シリアルデジタルコンポーネント信号を270Mbpsで伝送する。 D1とはもともとSMPTEが策定したVTRフォーマットで、後にCCIRが国際規格としたもの。
...リクロックとは長距離伝送により発生した波形ひずみやタイミングのズレをPLLにより元信号からクロックを抜き出してタイミングを取り直し波形整形をする動作のこと。
...ジッターとは信号を長距離伝送することで本来なら等間隔であるはずの元信号に時間軸上の「ブレ」が発生する。この「ブレ」をジッターと呼び、ジッター成分が多くなるとビットエラーが発生し伝送先の画にノイズが出たり画自体が再現できないことになる。

■信号線の種類

同軸ケーブル
同軸ケーブル
従来、映像信号の伝送にはメタル線を絶縁物とシールド線で覆った同軸ケーブルが使用されてきました。同軸ケーブルとは一本のメタル線に発泡ポリエチレンと編組シールド線を同心円状に覆ったケーブルで、テレビ信号の伝送によく使われています。
同軸ケーブルの種類も太さや絶縁材質、編組シールドの種類によって区別されています。

似たような構造を持ったものにシールド線がありますが"同軸ケーブル"と"シールド線"の違いはケーブルの特性インピーダンスがJIS規格などで規定されているものを "同軸ケーブル" と呼び、編組シールドで覆われただけのものを"シールド線"と呼んでいます。

同軸ケーブルにはインピーダンス50Ωのケーブルと75Ωのケーブルの2種類が存在し、50Ωのケーブルは主に音声の伝送に使用され、75Ωのケーブルは映像の伝送に使用されています。
同軸ケーブルのインピーダンスとは直流成分を送る場合は抵抗値0Ωですが、映像信号などの周波数の高い信号に対しては75Ωの抵抗値が発生します。これは同軸ケーブルの芯線が交流成分にとってはコイルのような役目をするため高周波を流すとインダクタンスが発生し、シールド線の間にある絶縁体の発泡ポリエチレンがコンデンサの役目をしてキャパシタンスが発生するためです。
いずれにしても伝送する信号の周波数が高くなると、外部からのノイズに対する遮蔽性が重要となってきます。

具体的な例として「5C−FB(S)」の同軸ケーブル側面に表示されている意味を記載します。
種類意味
[5]はケーブルの太さを表しておりケーブルの直径ではなく編組シールドの直径を表しています。(単位はmm)
[C]はインピーダンスを表しており75Ωの意味。[D]は50Ω
[F]は芯線と編組シールド線の間にある絶縁物の種類を表しており発泡ポリエチレンの意味。
[2]は充実ポリエチレン、「HF」は高発泡ポリエチレン
[B]は編組シールド線の状態を表しており二重編組シールド線+アルミ箔の意味。
[V]は一重編組シールド線、[W]は二重編組シールド線、[T]は三重編祖シールド線、
[L]は三重編組シールド線+アルミ箔
[S]は内部導体が「より線」のもので「単線」のものは表示なし
...インピーダンスとは交流成分にのみ発生する抵抗値のことで、直流成分に対しては抵抗にならない物でも交流成分に対しては流れの妨げになる物がある。これは直流と交流の性質の違いによるもので、コイルにはインダクタンス、コンデンサにはキャパシタンスが発生する。単位はΩ(オーム)。

従来の同軸ケーブルで扱っていたD1信号では、有効ピクセル数が720x486=349920で情報量も270Mbpsと少なかったのですが、HD信号では1920x1080=2073600とD1信号に対して約6倍のピクセル数を扱うため5C−FBケーブルでも約300dB/kmも減衰してしまいます。
そのためHD信号のような広帯域の信号を長距離伝送するためには減衰率を考慮した配線をしなければ伝送エラーによる障害が発生してしまい、メタル線に変わる新たな伝送方式である光伝送の導入が必要不可欠となってきたのです。

■光の性質

物質屈折率
空気1.00
1.33
水晶1.42
石英ガラス1.45
プラスチック1.49
塩化ナトリウム1.53
ダイヤモンド2.42
光とは波長の短い電磁波の一種で約3x108/secの速度で進み、その速度は空間の誘電率と透磁率で決まります。光伝送で扱う光は単純に自然発光する光ではなく人工的に光の強弱を誘導できるレーザーが使われています。
レーザー光線の基本的性質は「スネルの法則」により「直進」「屈折」「反射」の三要素に分類され、直進する光がある物体に入射したとき物体の境界面で発生する光の屈折と反射の法則を説いています。
たとえば水中に手をかざした時、目で見える位置と実際の位置が異なる現象が起こります。
この時、水面で起こっている現象が光の屈折なのです。
この原理を応用して光を遠くまで伝達する方法がレーザー光線による光伝送なのです。

光の伝送に使われるケーブルは内部が空洞になった光ファイバーを使用し、その材質によってレーザー光線の「屈折」「反射」「吸収」「分散」が発生するため材質の選定や不純物の配合には細心の注意が必要となります。
現在の光ファイバーで使用されているケーブルの材質は屈折率1.45の石英ガラス素材や屈折率1.49のプラスチック素材が多く使われています。
...レーザー(Light Amplification by the Stimulated Emission of Radiation)とは誘導放出による光の増幅の略でLEDのような自然放出ではなく、外部からの誘導によって強弱を調整できる誘導放出による発光物のこと。

■光ファイバーの構造

光ファイバーは「コア」と「クラッド」の同心二層構造で構成され「コア」が光を伝送しコアを覆うように外周に「クラッド」がコアとは異なる屈折率でコア内部の光を全反射することによりレーザー光がファイバー内をジグザグに進み、進行する経路(モード)の種類によって2種類のモードに分けられます。
経路(モード)が複数(マルチ)の経路を経て伝送されるファイバーをマルチモード光ファイバー(Multimode Optical Fiber)、経路(モード)が単一(シングル)のファイバーをシングルモード光ファイバー(Singlemode Optical Fiber)と呼んでいます。

マルチモード光ファイバー(Multimode Optical Fiber)の特徴はコア径が太く、レーザー光が多くのモードに分散して伝送され、屈折や衝撃に対して強く、ファイバ同士の接続やファイバと機器との接続が比較的容易にできて安価である反面、伝送損失が大きく長距離伝送には不向きです。

一方、シングルモード光ファイバー(Singlemode Optical Fiber)はコア径が細く、光が単一のモードで伝送され、伝送損失等が小さく長距離伝送に向いていますが、ファイバーが細くて曲げに弱く、ファイバー同士の接続やファイバと機器との接続に高い機械的精度が必要で高価なファイバーです。

マルチモード光ファイバーはコアの屈折率分布によって「ステップインデックス」と「グレーデッドインデックス」の2種類に分けられ、シングルモード光ファイバーは分散波長により数種類のモードタイプに分けられますが、代表的な形式はデータ伝送などのLANで使用される「グレーデッドインデックス」と映像信号や音声信号で使用される「汎用シングルモード」です。

SIファイバー(Multimode Step Index Fiber)
コア径の大きいファイバーで伝送される光は様々な経路に分散して伝送され、光の分散が大きく伝送距離は500m程度で、安価ですがあまり使われていないファイバーです。

GIファイバー(Multimode Graded Step Index Fiber)
SIファイバーよりもコア径が小さく50μ〜85μで伝送されコアの中心から外径に行くに従って反射率を低く設定しています。屈折率が低いと伝送速度が速く通信速度を重視するLANやコンピューター間のデータ伝送によく使われています。

SMファイバー(Singlemode Step Index Fiber)
マルチモードファイバーとは異なりファイバー内部の光の分散を無くして一つのモード(経路)で伝送するようにコア径を小さくし5μ〜10μ程度のコア内を光伝送します。
映像信号の伝送に使用されているのがこのファイバーで1310nm帯に零分散波長があるSMファイバーは50〜100GHzの帯域特性があり1.5GHzのHD信号を伝送しても0.5dB/kmしか損失がなく、50kmまで増幅器なしで伝送が出来る非常に低損失な特徴をもっています。

■光ファイバーの取り扱い

光伝送は送り側機器でデジタル信号のE/O(Erectic_to_Optical)変換を行い光ファイバー内を伝送されて、受け側機器でO/E(Optical_to_Erectic)変換を行い元の信号に復元しています。
つまり光伝送はE/O(Erectic_to_Optical)・O/E(Optical_to_Erectic)変換の性能と寿命に大きく依存し、現在のLEDの寿命は約5万〜10万時間と言われており、伝送損失も1.3μm波長帯で0.5dB/km、1.55μm波長帯で0.2dB/km程度です。

しかし良い面ばかりではなく光ケーブルは屈折に弱く光ケーブルの直径の6倍のR半径以内に曲げてしまうと折れてしまうデリケートな側面があり、汚れにも弱くコネクター接続部分に小さな埃が付着しただけでも映像が断する可能性があります。

下図のように光コードのコネクターには"FCコネクター(ねじ式)"と"SCコネクター(ワンタッチ式)"などがあり、脱着は簡単に行えますが現場で断線などのトラブルが発生したときに同軸ケーブルに比べて加工が難しく応急処置ができないなどの難点があり、まだまだ同軸ケーブルの需要がなくなることはないでしょう。

FCコネクター SCコネクター LCコネクター
FCコネクター SCコネクター LCコネクター



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